高機能性塗料コラム
第26回、くるまの目にもお化粧を。
投稿日:2020/4/20
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの辻です。
今回より2回にわたって真空蒸着用塗料『BRIGHT』カラートップコート
について、自動車ヘッドランプ用途を例にお話しさせていただきます。
◇ヘッドランプの構成と適用コーティング剤について 1)2)
ヘッドランプは、自動車が夜間でも安全に走行できるよう
前方を照らす灯具であり、図1で示すように、光源となるバルブ、
ヘッドランプの土台となるハウジング、光源の光を適切に反射させるリフレクター、
自動車のデザインに関わるエクステンション、ヘッドランプ内部を保護する
レンズなどの部品で構成されています。
コーティング剤としては、リフレクターやエクステンションの基材(FRP)の
凹凸を埋めることによってアルミ蒸着面を鏡面化するアンダーコート、
アルミ蒸着面の保護に加え、カラーなどの意匠性を付与するトップコート、
さらにレンズに対しては、外側の保護のためのハードコート、
内側の結露によるランプ曇りを防止する防曇コートなど、パーツに応じて適用されています。
◇自動車ヘッドランプの変遷 1)2)
1980年頃までのヘッドランプはガラス製のレンズカバーにカットを入れることで配光
(法律や規格に基づいた照明範囲と光の強さ)を制御していましたが、
その後、燃費向上のための軽量化によって、レンズカバーの基材がガラスから
プラスチック(ポリカーボネート)へ変遷すると共に、リフレクター(反射鏡)側に
カットを入れて配光制御するようになりました。
これによりレンズは透明なレンズカバーとなり、ランプの内部も含めたデザインの自由度が大きく向上し、
現在ヘッドランプは単なる照明装置だけでなく、自動車の「顔」として車の印象を決める重要な意匠パーツ
としての役割も担うようになっています。図2に、ヘッドランプの形状と意匠の移り変わりを示します。
◇蒸着用カラートップコートと塗装課題
当社における自動車ヘッドランプ用塗料の歴史は古く、1980年頃からヘッドランプ内の
鏡面保護(アルミ蒸着膜の防錆)を目的とした蒸着用トップコートを販売していました。
当初は無色透明でしたが、先に述べたように、ヘッドランプの変遷でレンズが透明になったことから、
1990年頃からアルミ蒸着の輝度を活かした隠蔽性のないカラークリヤー意匠が登場しました。
例えば、スポーティーさを出す車種にはエクステンションを「スモーク調の淡い黒」にして
精悍さを強調したり、ハイブリッドや電気自動車のように環境をイメージした車種には
「淡いブルー」や「淡いグリーン」色が施されます。(図3)
実際にカラートップコートを塗装してみるとわかりますが、隠蔽性はありません。
隠蔽性がないから「カラークリヤー」と言われる由縁であり、
アルミ蒸着面の金属意匠を透明なカラー被覆層によって、
より一層に引き立たせるコーティング剤といえるでしょう。
その反面、隠蔽性を有するソリッドカラーに比べると、膜厚むらによる“色むら”が目立ちやすく、
また、光の干渉による"干渉縞(虹模様)"が見えやすいという欠点もあります。
その他、アルミ蒸着表面の何らかの汚染起因の"ハジキ"やヘッドランプ組立時の
基材ひずみによる"塗膜クラック"の発生など、様々な不具合事例があり、これらを図4に示します。
これらの不具合を一つ一つ解決することで要素技術を積み重ね、
様々なグレードの蒸着用カラートップコートを開発してきました。
次回のコラムでは、その解決方法についての解説も加えたうえ、
当社の蒸着用カラートップコートのラインアップを紹介したいと思います。
<参考文献>
1) 柴田薫,(一社)日本光学会光設計研究グループ機関紙 No.57,7,23(2015)
2) 遠藤幸典, 迫田隼人, 大久保賢優, 車載テクノロジー, 6, 18 (2018)