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高機能性塗料コラム

 第39回、工程が減ると楽ですよね。

投稿日:2021/8/17

こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。

高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの大久保です。

 

 離型コーティング剤(塗料)の身近な使用例としては、粘着ラベル・シートなどの

粘着剤面を一時的に保護する剥離(離型)フィルムにも塗装されており、

その塗膜は剥がされるフィルムのベース基材にはしっかりと付着し、

その塗膜の被着面である粘着剤面に対しては、「適度に剥がしやすい」ことが

離型コーティング剤(及び離型フィルム)の重要な機能です。

 近年は、光学ディスプレイの偏光板やセラミックコンデンサ、

フレキシブルプリント基板などのエレクトロニクス関連の剥離(離型)が必要機能で

ある工程フィルム用途(セパレーター、転写フィルム、キャリアフィルム等)への

適用例も多く、工業用途での活躍の場を広げています1)2)

 

 さらに、前回に引き続き、今回のコラムでは、被着面の一時的な保護だけではなく、

被着面である製品表面に対し、マット(艶消し)外観を転写する離型マットフィルム・

離型マットコーティング剤について、解説したいと思います。

 

 前回のコラム「第38回、凹凸を写すことで艶が消える?」では、離型マットフィルムの製法として、

マット外観を得るため、塗膜表面に凹凸をつける手法についてお話ししました。

今回は、その中でも「転写法」にフォーカスし、離型マットフィルムに、トップコートを塗装した後に剥離させ、

最終製品の表面となるトップコート塗膜にマット外観を転写させる方法と、

そして、このシステム向けに新規開発した当社の離型マットコーティング剤について、詳しくお話をいたします。


主な転写方法としては、表1のような手法があります。




表1の①・②は従来の工法であり、2段階の工程が必要でした。

工程1.マットフィルムを製造

 ①では、フィルム自体にをサンドマット(サンドブラスト)処理し、マット化

 ②では、フィルムにフィラー等が分散されたマットコーティング剤を塗布し、マット化

工程2.離型コーティング剤(TOMAX FS-9000シリーズ)を塗装し、離型マットフィルムとして完成。

 

 当社では、上記工程を1度で完結させるべく、マット外観の意匠性と離型性の二つの機能性付与を可能とする

③の工法向けの離型マットコーティング剤「TOMAX FS-9500Mシリーズ」を開発しました。

 

一例として、FS-9500M塗膜上に、加飾成形用UV硬化ハードコーティング剤NXD-001Aを塗装し、

両塗膜界面で剥離させて、最終製品の表面となるNXD-001Aの塗膜にマット外観を形成させたイメージ

(塗膜断面)図と、離型マットフィルムの離型層及びマット外観を転写させたハードコート層の

ヘーズ等の表面特数値、両層の剥離強度を図1に示します。

また、比較として、離型ノンマット(クリヤー)コーティング剤TOMAX FS-9200Lを転写させた場合の

NXD-001A塗膜の表面特数値も記しています。

この場合、NXD-001A塗膜には、当然マット外観が転写されることはなく、

低ヘーズで高光沢の塗膜外観を示していることが判ります。


 

 なお、図1中の「TOMAX NXD-001A(マット転写後)の外観」の表のTOMAX FS-9500Mの離型層と

転写ハードコート層の例でも判りますように、両者のヘーズが異なることも起こります。

 →・離型層のヘーズ:24%、・転写ハードコート層のヘーズ:28%

 

これは、図2に示すとおり、離型層と転写ハードコート層の粒子の有無、凹と凸の違い、塗膜自体の屈折率の

違いなどにより、反射(散乱する)光、屈折(透過する)光の度合いが変わってくるからです。

そのため、お好みのマット外観を得るためには離型マットコーティング剤のマット(凸の高さと頻度)感の調整

もちろんのこと、実際に転写を行って、転写ハードコート層のマット感を調整することが必要となります。


 当社のFS-9500Mシリーズは、お客様のご要望に合わせてヘーズ、剥離強度等を調整いたします。

離型マットコーティングをご検討の方は、ぜひ当社へお気軽にご相談ください。

 

 なお、当社の離型コーティング剤は、シリコーンが悪影響を与えやすい電子機器用途への適用も想定し、

下記のマットタイプとノンマットタイプのすべてにおいて、ノンシリコーンの品揃えとしております。

 


 従来(表1の①②)の工法で使用できるノンマット(クリヤー)タイプの離型コーティング剤の品揃えは、

下記のとおりです3)4)

 



 加えて、本コラムでは、離型マットフィルムを用いてマット外観を付与させた一例として紹介した

加飾成形用のUV硬化ハードコーティング剤TOMAX NXD-001Aを初めとし、

その他にも各種のハードコーティング剤も取り揃えております5)

<TOMAX フィルム用機能性コーティング剤>

 

 さらに、これらの製品ラインナップ以外の「こんな塗料できないの?」とのご要望もおおいに歓迎であり、

そのようなご相談を心よりお待ちしております。

 

<参考文献>

1) “離型塗料” 塗料の機能性 -機能性塗料の技術開発・Q&A-、(一社)日本塗料工業会、pp.63-65(2021)

2) 高機能性塗料コラム “第3回、何故ノンシリコーンではがれるの?”

 日本化工塗料ホームページ (2021/8/8参照)

3) “ノンシリコーン離型コーティング剤”、日本化工塗料ホームページ (2021/8/8参照)

4) 高機能性塗料コラム “第21回、UV硬化だから基材のダメージも少ないんです!”

 日本化工塗料ホームページ (2021/8/8参照)

5)“TOMAX フィルム用機能性コーティング剤”、日本化工塗料ホームページ (2021/8/8参照)

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