高機能性塗料コラム
第43回、環境にやさしく紙に機能をプラス!
投稿日:2024/10/16
こんにちは。「こんな塗料できないの?」に私たちが答えます。
高機能性塗料設計技術ソリューションパートナーの瓜生です。
今回のコラムでは、環境と機能に特化した私たちの機能性塗料、
1.脱プラスチック化できる紙用目止めコート
2.フッ素を用いない紙用耐油コート についてご紹介します。
1.脱プラスチック化できる紙用目止めコート
使い捨てられたプラスチック製品が適切に処理されず、環境中に流出することが
あります。特に海洋プラスチックと呼ばれるものは、風や波などの物理的な影響や
紫外線や温度などの化学的な影響を受けて5mm以下になったマイクロプラスチック
になります。これを生物が誤って摂取することが問題となっています。(図1)
マイクロプラスチックによる直接的な害は、まだ人体に対して明らかになっていませんが、食物連鎖の観点から楽観視できない状況です。
パッケージング分野における脱プラスチックの一環として、代替提案されているのが、
“紙パッケージ”への移行です。紙は、処理や加工を施さないと水や油を吸収し、寸法安定性や機械強度が
低下します。しかし、適切な加工を行うことで、水や油をはじく耐水性や耐油性を付与することが可能です。
これまで紙への耐油性付与にフィルムを利用したラミネート加工が多く使われてきましたが、
紙のリサイクル時に課題がありました。一方、紙用コート剤によるコーティング加工では、
コート剤だけを剥離させる技術があり、使用する樹脂の量も少量で済むため、環境負荷を低減可能です。
さらに、ラミネート加工に比べて、水蒸気や空気の透過性をコントロールできること、耐薬品性が高いこと、
難燃性を持たせることなどのメリットもあります。以下にラミネート加工とコーティング加工の特徴を示します。
ラミネート加工の代替例として、紙に離型塗料を塗装するラベルやシールがあります。
しかし、紙基材にそのまま離型塗料を塗装すると離型成分ごと紙の内部に染み込み、
反対面に塗布される粘着剤の性能に悪影響を与えてしまいます。
そこで私たちは離型塗料の性能を損なわない目止めコートを提案します。
この目止めコートを離型塗料の塗布前に塗布することで、粘着剤への影響を防止し、
従来の離型性を損なわずに使用することが出来ます。
2.フッ素を用いない紙用耐油コート
食品接触する耐油コートに関して重要なのは、環境負荷の少なさと安全性です。
最近、新聞やニュースで有機フッ素化合物(PFAS)問題を耳にしたことがあるかもしれません。
フッ素加工は、傘であれば水をはじき、フライパンでは油をはじくなど、
水や油を問わず様々なものをはじきます。食品に接するフッ素加工された身近な紙には、
ベーキングシートやクッキングシートが挙げられます。
しかし、有機フッ素化合物は自然界に長く残留し、人や動物に悪影響を及ぼす可能性があるため、
禁止されているものもあります。(PFOA、PFOSが代表例です)。
すべての有機フッ素化合物が禁止されているわけではありませんが、
代替材料としてアクリル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンやポリエステルが挙げられます。
私たちは、PL制度やFDA基準に準拠した安全性が評価された材料を用い、
これまでに培ったフォーミュレーション技術によって、耐油性・耐水性・接着性などの機能性を兼ね備えた
フッ素代替耐油コート剤「No.8000、No.9000シリーズ」を提案します。
下記、表1に耐油コート剤の各種グレードの性状と性能を示します。
No.8000シリーズは、主にオフラインで厚紙に塗布されて使用されます。
この製品は、すでに食品メーカー様で採用されており、チョコレート包装の台紙などに使用されています。
薄紙用途向けにはインラインで塗布されるNo.9000シリーズがあり、耐油性と透気度の両立が可能です。
またリサイクルのしやすさも考慮した設計となっています。
今回は、脱プラスチック化を実現する紙用目止めコートや、フッ素代替の紙用耐油コート剤をご紹介しました。
紙製品向けコート剤は様々な開発検討を行っていますので、ぜひ10月23日から25日の3日間、
東京ビッグサイトで開催される「TOKYO PACK2024 東京国際包装展」の弊社展示ブース
(東3ホール、パッケージングマルシェ(3K24))に御来場いただき、ご相談いただければ幸甚です。
最後までお読み頂きありがとうございました。